久留米大学医学部はその名の通り九州最大の筑紫平野の中心久留米市にあり、この地域一帯の救急医療を担いながら世界的なレベルの研究・医療を行ってきました。
医学部全体で80年余の歴史を持ち九州のみならず全国に多くの先輩を輩出しています。学部全体の雰囲気として、まず臨床力の充実・研鑽の気概があり特に若手医師(研修医)が意欲に溢れ病院の中を忙しく働く姿は大変頼もしく感じます。
こういった大学にあって脳神経外科は1971年に九州で3番目の脳神経外科学講座として誕生しました。
倉本進賢初代教授、重森稔教授に続き、2011年私森岡基浩が第3代教授として着任いたしました。
当大学の脳神経外科の特徴として、筑紫平野一帯の救急医療を担うために10年前から全国に先駆けて導入された“ドクターヘリ”により周辺100 km圏内から重症の頭部外傷・脳卒中が搬入され、集中治療部にて脳神経外科の専属スタッフが最先端の治療を行っています。
重症で合併症の多い症例が特に搬入されますので治療困難な患者さんが多いのですが、脳神経外科医にとってはやりがいのある仕事です。
悪性脳腫瘍に対してはワクチン療法、Navigation System、5-ALA等を用いた先端治療、他科との共同での頭蓋底手術などの体制を完備し、困難な脳血管障害に対しては血管内治療グループと開頭手術グループによる協力のもと最善の治療が可能です。また脊髄外科グループも充実し年間100例以上の脊髄手術も行っております。
このような環境で充実した脳神経外科最新の医療を提供し、若手の脳神経外科医を育成することがまず私達の本分であると考えますが、若い医師には研究の経験も重要と考えています。
医療はどうしても手術技術や経験の裏打ちが重要ですが、それ以外に経験だけでは治療できない患者さんに遭遇することが必ずあります。
その時に“何故だろう?”と科学的論理的に考え新たな治療対策を考える力が必要です。そのためには研究の経験が必要と私は考えています。
また現在の医学では治療できない疾患に対する治療法は研究なしでは開発できません。
脳神経外科学講座では臨床の経験だけではなく、研究の経験ができるような体制をとっており研究を奨励しています。
現在のところでも脳腫瘍に対するワクチン療法、重症頭部外傷の病態と治療、難治性の脳血管障害に対する基礎研究が行われています。
このように久留米大学脳神経外科は患者さんに最先端の最善の医療を提供し、次代を担う優秀な脳神経外科医を育成、そして新たな脳神経外科学の知見を世界に発信できるように努力してゆきたいと考えています。